
立体的な浮世絵(美人画):押し絵の奉納額

浮世絵といえば、美人画や役者絵など、江戸時代に多くの作品が世に出されました。江戸時代後期から明治時代にかけて、同じような題材を対象にして、絹布と綿を用いて、立体的に仕上げた「押し絵」がつくられるようになりました。色彩鮮やかな布を立体的に縫い合わせて、大きな押し絵作品を作るには、手間暇だけでなく、特別な技能が必要だったことでしょう。
その押し絵作成の技能向上を願って、天満神社に押し絵の額が奉納されています。その奉納額には、「明治42年9月新調」と刻まれています。「願主 岩林音祐」と作者名と合わせて刻銘されていますが、新調の年号のみ、ひときわ色鮮やかに残っています。一旦、明治42年よりも前に奉納されていたのを、再度作り直して、明治42年に奉納したのが、現在まで残っているのかもしれません。
豪華な着物姿の六人の女性の姿とその背景には、枝垂れ桜や松など、質感の異なる題材を組み入れています。百年以上が経過して、色あせてしまっていますが、仕立てはそのまましっかりとしており、裁縫技術の確かさがうかがわれます。